■ 概要
グラウンデッドセオリーアプローチに関する基調講演と公開スーパービジョンから成る、共同研究会。
■ 参加しての記
*ニューズレターへの寄稿から転載させていただきました。
相互行為論の祖のひとりG・H・ミードの古典を研究しながら農村でフィールドワークをやっております。農村でのフィールドワークは、基本的に「モノグラフ」の伝統のなかでおこなっておりますが、相互行為論や質的探究の観点から「意味世界」「社会的世界」としての営農志向や食・農文化を把握する方向をめざしています。そのなかでGTAに学びながら集計・分析作業をおこなったことがありますので、その経験からお話しいたしました。
話題は、デスクワークを通した「感受化」、チームワーク、ルートイメージとしての言語論的転回(レトリカルアプローチ)、理論的討議とカテゴリーの飽和、課題の切り分けと論の構成、といったものでした。これらを通じて、「理論との対話」が求められる諸契機を探ったつもりです。要するに「集計」や「コーディング」も機械的な作業ではなく「理論的討議」の負荷がかかったおこないではないか、という趣旨でした。
そんな趣旨はすこし浮いてしまうかもしれない、もっと技術的な錬磨を求められるのではないか、むしろそこを勉強させていただこう、といったふうに想像していたのですが、参加してみると、GTA(M-GTA)とは手順的な技法(狭義の「方法」)にとどまらず、デスクワークや理論的討議も含んだ広い意味での「方法論」であることが、とてもよくわかりました。とりわけ、小倉先生の「リフレクション」のお話は、こんなにも共通項や交差点が多いものなのかと、驚くばかりでした。後半の公開スーパービジョンも大変参考になりました。狭義の手順・技法を吟味するうちに、広義の探究課題や問題意識までもが問われ、明確になってゆくのです。これはまさに、「問い」を育て、研究する人の目や手を方法として磨き上げるプロセスなのだ、と実感することができました。
お話をいただいた頃はまだ研究室も回復していないころだったかと思いますが、このように充実した時間を持つことができたのは、個人的にも幸せなことでした。企画していただいた方々、お集まりいただいた方々、本当にありがとうございました。自分の社会学に何ができるのかをいっそう自覚的に考えてゆくためのヒントにしたいと存じます。