東北大学大学院情報科学研究科 コミュニケーション社会学(徳川・岡田研究室)

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プロジェクト

徳川 直人 教授が取り組んでいるプロジェクト

岡田 彩 教授が取り組んでいるプロジェクト

近年は、市民社会領域における相互作用の中でも、寄付の動機に着目した研究を進めています。

現代の日本社会では、実に様々な場面で寄付が行われています。スーパーマーケットやコンビニエンスストアの募金箱に小銭を入れたことがあるという方、災害発生時に被災地向けに金銭を提供したという方、子ども食堂を運営するNPOに寄付をしたという方も、少なくないようです。古着や古本などの物資を寄付したことがある方もおられるかもしれません。最近では、「ふるさと納税」や「応援消費」といった、消費行動との線引きが容易ではない行動も多く見られるようになりました。

こうした寄付の動機は、多様であると考えられます。なぜ寄付をしたのか、皆、それぞれの理由や背景をお持ちであると思います。「困っている人の役に立ちたかったから」「社会のために自分ができることをやりたかったから」「もう自分には必要なくなったから」「お釣りで小銭が増えるのが面倒だったから」「良い人と思われたかったから」「ひまだったから」など、十人十色の動機があると考えられます。

しかしながら、良く耳に入ってくるのは、「社会の役に立ちたい」「他者のため」「自分の成長のため」といった似通った動機ばかりです。なぜなのでしょうか。

私はこの現象を、社会学者C.W. Millsが提唱した「動機の語彙論」を手がかりに解明することにチャレンジしています。行動と動機の関係を考えたとき、これまでの多くの研究は、動機というのが予め人間の心の中にあって、そこから行動が生まれる、と考えてきました。こうした従来の考え方に対して、「動機の語彙論」では、人間の行為の動機は心の中に予め存在するものではない、と提起します。動機とは、自分の行動を他者に説明するために言語化された言葉に観察あれるものであり、それゆえ、相手が疑問なく納得できる内容が言語化される傾向が強いというのです。

このように考えると、良く耳に入ってくる寄付の動機は、現代の日本社会において、多くの人が寄付の動機として「適切」であると疑いなく捉え得るものばかりであることに気が付きます。相手が「なるほど」と疑問を持つことなく受け取ってくれる動機であり、だからこそ、多く言語化されるのだと考えることができます。このようにして、頻繁に聞かれる「安定した動機」と、「いや、これは言ったらマズいかもしれない」と判断して言語化されることが少ない「不安定な動機」が形成されていくと、「動機の語彙論」は教えてくれるのです。

このような観点から寄付をした方の言葉に耳を傾けると、寄付者自身によって「ためらいなく語られる動機」と「ためらいとともに語られる動機」が区別されていることが浮かび上がってきます。寄付は、富や財の移転という経済的な行為ではなく、個々人が他者の影響を受けて形成・実践する社会的な行為として捉えられるのです。

「安定した動機」と「不安定な動機」の境界線に注目するようになってから、その線引きが、寄付の動機が発話される社会や状況によって異なるのではないかと、仮説的に考えるようになりました。日本では「これは口に出すとちょっとまずいかな」と思う動機も、もしかしたら、別の社会では平気で言語化されるものかもしれません。逆もまたしかりです。同じ寄付という行為についての言葉でありながら、このような差異があるとしたら、興味深い不思議な現象であると私は考えています。

この現象を、まずはアメリカと日本との比較で検証することにチャレンジしています。2025年10月~2026年6月の間、米国Indiana University Indianapolisにある Lilly Family School of Philanthropyにて、フルブライト奨学金の支援を受けたVisiting Scholarとしてこの課題に挑戦中です。

その他にも、現在以下のような研究プロジェクトに従事しています。
・東アジアにおけるNPO教育の実態と特徴に関する国際比較プロジェクト
・アジア諸国におけるNPO研究リソースのマッピングプロジェクト
・NPOのガバナンスにおける外部理事の意義に関する研究プロジェクト(一般社団法人 World in Youのプロボノとして)

その他これまでの研究活動については、Researchmap 個人ウェブサイト