相互行為論と農村社会学。この二つが出会うところで何ができるのか。それは、私にとってもなお模索中のテーマです。
相互行為論と農村社会学。この二つが出会うところで何ができるのか。それは、私にとってもなお模索中のテーマです。
一枚のリンゴの写真から、この授業は始まります。
問題は食と農の社会的な距離。いかにこれを克服して生活文化を再建しうるか。それと、社会科学を学ぶ意義を、どう結びつけるか。
単にレクチャーするばかりではなく、いろいろな形の学生参加を含む取り組み(食記録、食農イメージ調査、生活改善手帖など)を試行中もしくは遂行予定。
2010年開始。基幹科目「社会の構造」として。
ご縁を大切に、山形県庄内地方、北海道深川市・別海町などで、息長く進めてきました。
「対象世界に頭を下げよ」を原則とする、生きた経験の目線を大切にしたインタビューが中心です。
すぐさま答えが出るわけではありませんが、研究・分析の前に、まず「学ぶ」こと、「考える」ことが社会学の任務だと考えています。
作成中 語り聞く根釧パイロットファーム
入植当事者が書いたものや聞き書きを中心に構成する集合的生活史の試み。
進行中 マイペース酪農の思想像(仮題)
2001年「マイペース酪農交流会の意味世界とその特質」の続き
試行中 食農文化調査
食農由来の言葉の認知、牧場イメージ、等々に関する社会調査。
「営農志向」とは、細谷昂らの研究グループが主に山形県庄内地方を舞台として展開してきた農村調査のなかで次第につくりあげられてきた言葉です。
直接的には、細谷昂・小林一穂(1980)が、集団栽培後の農業について、酒田市の生産組合長らがどのような意向なり展望を持っているかに関する調査を「営農志向調査」と名づけたことを端緒とし、以後、第2次「営農志向調査」(小林・松井・徳川 1990)、第3次「営農志向調査」(徳川・相澤・劉 2001)のように用いられてきました。
その概念は、当初、「農民の現状認識と今後の方向性に関する意向」をかなり概括的に指していただけでしたが、今日までの蓄積のなかで次第に明確なものになってきています。
たとえば小林(1986)は、農家が現実的に志向しうる家族労働力の配分(経営内容の選択)という観点から、水稲専作志向、複合化志向、農外就労志向のように、定式化しました。これらは「いま現実的にありうる」という意味が強いものでしたが、「今後そうしたい」という意向の意味も含むものでした。また、農外就労もまた農民的行動と理解しているので(必ずしも離農を意味しない)営農志向の範囲に入ります。
私は、自分流に工夫した調査票でそれを北海道の稲作地帯に適用し、稲作専作志向と複合志向といった「営農志向の分化」を明らかにしてきました。道東の酪農地帯においては、複合や兼業といった選択肢はほとんど存在せず、小中規模の家族経営農業をめざすのか、大規模な展開を目指すのかといった、「拡大」への志向性のちがいとして、それを追跡してきました。
このような 経営内容なり経営戦略の「分化」には、家事分担や生活時間の再調整、具体的には夫婦関係や親子関係について自明視されてきた習慣の変更、広い意味での生活哲学の変質が伴います。また、今日の食の問題への対応、あるいは競争と差異化の原理への対応は、消費者との関係についての考えや、ひいては農村・農業観や自然観の変容をも促さずにはいません。
これゆえ、営農志向は単に「生産」場面だけでなく「農民の生活の側面における意識」をも指すべきこととなりました(小林 1999: 8頁)。これを徳川は、特定の経営や生活を正当化する論理の問題と考え、「意味世界の問題」と呼んで、主題化を試みてきたわけです。
私見によれば、今日の農村は、異なる営農志向、ひいては異なる意味世界なり思想像が併存、競合、葛藤する状況にあります。
私の関心は、ただその形成とか展開を「観察」することにあるのではなく、その声が今日の社会状況や生活様式に対していかなるメッセージを発しているか、もっといえばオルタナティブな生活文化の形成にとっていかなる刺激でありうるか、という実践的課題に置かれています。
下ほど古層。
2001年「庄内地方における営農志向の現況と農村社会」(相沢出・劉章旗と共著)
「営農志向研究」のひとつ。差異化・差別化の中での小集団営農の展望を模索。
2001年「マイペース酪農交流会の意味世界とその特質」
「牛飼いの言葉を取り戻す」という視点からの考察。『畜産の研究』に載りました。
現在はこの延長線上の方法態度で仕事をしています。
1998年「大規模酪農地帯における暮らしと農の意識と論理」(田村真広さんと共著)
北海道教育大学の学生さんたちと農家を訪れ深くインタビュー。営農志向の分化と葛藤。
1998年、「酪農家の営農意欲・充足度・営農論理に関する基礎調査から」、『釧路論集』(北海道教育大学釧路校)30:235-258 頁。
1998年、「「自由化」と稲作農家の論理および意味世界」、『村落社会研究』(日本村落研究学会)8:22-33頁。 *審査付「研究ノート」
1995年、「農業「危機」下における稲作農民の営農意欲」、『釧路論集』(北海道教育大学釧路校紀要)27:71-85頁。
1995年、「農業「危機」下における稲作農民の営農志向」、『北海道教育大学紀要(第1部B)』46・1:29-43頁。
1990年、小林一穂・松井克浩・徳川直人、「庄内農業の現況と今後の営農志向」、 『社会学年報』(東北社会学会)19:1-28頁。