相互行為論からの課題。ただし、対面的な会話の話ではありません。
相互行為論からの課題。ただし、対面的な会話の話ではありません。
一枚のリンゴの写真から、この授業は始まります。
問題は食と農の社会的な距離。
私がこれを食べるとき、私はいかなる相互行為に従事したことになるのか。
それを情報過程として見た場合、何が伝わり、何が伝わっていないのか。どんな声が聞き届けられ、どんな声が聞き取られておらず、どんな耳がそれを聞いており、聞きそらしているか。
2010年開始。基幹科目「社会の構造」として。
語られた言葉をいかに解するか、という問題ではありません。ある社会的状況のもとでは何が「語り得ないもの」になっているか、その論理的帰結や社会的結果はいかなるものか、ということです。
つまり「沈黙」の問題。語られたことを尊重するという意味での傾聴は、もちろん重要な実践であり概念ですが、しかし、そこに語る人があることを前提しかねません。そうではなく、もしも語りづらい・語り難いものがそこにあるのだとしたら、それを私たちはいかに聞くべきか。
いや、従来の聞く耳が、特定の声のみを聞いており、他の声を封印しているとしたら……? 傾聴とは、その耳をいったん解体してみるという姿勢であることになるでしょう。
農村研究の問題としては、いま農家は何を語りうるのか。いや、私たちはいま農業や農村について何を聞きうるのか。--食と農の社会的距離とは、そういう問題でもあります。
2012年、「聞き書き、著者性、傾聴」、『情報リテラシー研究論叢』(東北大学大学院情報科学研究科情報リテラシープログラム)1:55-71頁。
2014年度前期、東北大学文学部「社会学基礎演習」にて、相互行為論の応用として。